広島の大地が育む、学校給食を支える“人参”の物語~西原人参~
広島料理研究家&食空間コーディネーター&マナー講師の下山千津子です。
私は広島市認定の食農コーディネーターとして、生産者と消費者を繋ぐ活動を行っています。
今回、広島市戸山地区にある農業組合法人の人参農家を訪問し、
学校給食に提供される人参の栽培現場を見学してきました。
雪残る戸山地区で感じた生産者の誇り
2月下旬、広島市内は晴天に恵まれましたが、戸山地区にはまだ雪が残るほどの寒さ。
ここでは、学校給食に使われる人参が大切に栽培されています。
農業組合法人の生産者様から、人参栽培のこだわりについて貴重なお話を伺いました。
美味しい人参を育てるためには、ビニールハウスによる温度管理や栄養豊富な土壌づくりが欠かせません。
種の種類や種まきのタイミング、成長を促すための細やかな手間が必要であり、
その大変さを改めて実感しました。
収穫後は機械で洗浄し、大きさごとに仕分けられます。
学校給食では決められたサイズの人参が求められるため、
小さなものや形が整っていないものは処分されることも多いそうです。
「もったいないですね!B級品として販売しないのですか?」
そう尋ねると、すべてをお一人で担っている生産者様は、
限られた時間と労力の中で最適な方法として処分せざるを得ないと教えてくださいました。
広島県で生産される人参は年間約700トンと、北海道(20万トン)や千葉(11万トン)と比べるとわずかですが、
学校給食を支える生産者の責任感と誇りを強く感じました。
江戸時代から続く広島自慢の「西原人参」
今回の訪問では、広島の郷土野菜「西原人参」についても教えていただきました。
西原人参は、明治時代に地元農家が大阪から赤い金時人参を取り寄せ、品種改良を重ねて誕生したもの。
甘みが強く、かつては広島名物の牡蠣やお好み焼きと並ぶ地元自慢の逸品でした。
この伝統は、広島市にある原小学校の畑で今も大切に受け継がれています。
子どもたちが地域の食文化を学ぶ機会にもなっており、
地域全体で西原人参を未来へとつなぐ努力が続いています。
地産地消を支える料理研究家として
彩り豊かな人参は、料理を華やかにし、食べる人の心を掻き立てます。
今回の研修を通じて、生産者様の愛情が詰まった野菜を余すことなく活かし、
より多くの方に届けることの大切さを改めて実感しました。
私自身も、料理教室やイベントを通じて、広島の美味しい食材と生産者の想いを伝えていきます。
特に、規格外で市場に出回らないB級品の活用や、
食材を無駄なく楽しむレシピの提案に力を入れていきたいと考えています。
「ひろしまそだち」をしっかり味わいながら、
これからも地産地消を応援し、食を通じた地域貢献に取り組んでいきます。
この度の貴重な体験研修会を企画して下さった広島市農林水産振興センター様に
心からお礼申し上げます。ありがとうございました。
Chizuイートクリエイションズ代表 下山千津子